【マンガ】クルドの星を図書館で借りてきて読んだ

ここんとこのクルド人騒ぎが気になって目についたのだ。面白かった。
作者は安彦良和ガンダムの人というイメージ。なんでクルドに興味持ったんだろう。

読んでみたら、めちゃくちゃカッコよかった!そして長い長いクルドの戦い、アララト山の地下深くに隠されたノアの方舟、戦争に対する安彦さんのこだわり、ため息のでる終わり方、いい物語です。

偉才・安彦良和の初期傑作、ついに電子化!『クルドの星 上』安彦良和 | 文春デジタル漫画館

 ざっくりいうと、アムロ・レイみたいな男の子ジローが、お母さんの手紙をたよりにお父さんを探しに行く。実はクルドの族長の孫で、部族に迎え入れられ、戦いの中で成長していく。

 しかし、そこはクルドなのだ。戦っても戦ってもアラブとヨーロッパに挟まれすり潰されていく。悲しい。負けが込む。ついに部族は「クルドは1人で10人を倒す!」事を前提に南のイラクへ侵攻する計画を立てる。一方、ジローはお父さんが北のアララト山ノアの方舟の研究をしているらしいとわかり、そちらに行きたい。

 葛藤、人間模様、戦い、ジローはついに族長として認められる。そして部族は北へ向かう。

 しかし、ようやく見つけたお父さんが思っていたのと違っており受け入れられない(アムロっぽい!)さらに裏切り、戦闘、アララト山の地下深く、ソ連の秘密研究所へ向かう。そこにいたのがエヴァンゲリオン!最終決戦!母との再会、そしてジローはクルドの族長として戦いの日々へ戻っていくのだったー

 

 マンガに出てくるクルド族は野蛮そのものだ。挨拶がわりに決闘する。気に入らなければ殺しにかかる。ロバやウマに乗って、Fun to Driveランドクルーザに機関銃を積んでゲリラ戦を仕掛けていく。トルコはクルドを皆殺しにしたい。空挺部隊に戦車隊を投入し、さらにソ連がバカでかヘリで襲いかかる。 ヨーロッパ諸国も手出し口出しアメリカもいっちょ噛みしてくる。戦争、戦争、戦争だ。終わりが見えない。おわらない戦国時代。

 負けられない戦い、プライド、無茶な作戦、掟に縛られた思考、その中で人間は最後どうするのか。先の戦争の思いが強い人ほど、このマンガを読んだらクルド人に同情してしまうのではないだろうか。

 安彦さんはなぜクルドをマンガにしたのだろう。あとがきにはギリシャ神話を題材にしたアリオンのロケでトルコへ足をのばしたら、アジアの空気が気に入ったと書いてある。

 そういえば、ガンダムアリオンも戦いの中での成長、戦争におけるどうしようもない人間模様、正義と悪がないまぜになる世界がテーマになっている。

 もしかしたら、ギリシャ時代の次は聖書だ、そんで男の子がアララト山の地下深くに封印されたノアの方舟を起動して超能力で戦う話にしたかったのかも。

 しかし、そこにあったのは、未来の戦争や上の世代から聞いた話ではなく、マンガにするには生々しすぎる、現在進行形の戦争で、、、だから、ここに行き着くまでのクルド族編がこの物語の中心になってしまったのかな。 そんで、地下深くに封印された神というアイデアを日本にもってきたのがエヴァンゲリオンなのかもしれない。

 

 Googleマップで見ると、場所的にもう最悪なんだよ、西と東がぶつかる所、巨大な関ヶ原的なロケーション、どうやったって戦場になるしかない。

 アルバムの写真は、マンガにでてきた地形や遺跡や風景がそのままにあって面白い。青空に突き刺さるようなアララト山、地平線の向こうまで続く花いっぱいの草原、羊と山羊と犬、馬、テントの暮らし。何千年も昔から続く街並み、赤い煉瓦に賑やかな市場。まるでそこを旅行した気分になれる。行ってみたいと思う。

 

エルビルのシシケバブ、これこれ、まんがで食べてたやつだ、うまそう!

www.newsweekjapan.jp

 

 マンガの世界に引き込まれる。安彦さんもロバで国境超えてクルディスタンに行ってきたのかな。

 

 真っ黒になりながら工事をしている、あの人たちは、あの世界からやってきたんだ。戦国時代に負けたら賊軍で各国に散り散りに逃げていくシーン、そういう事が現代にもあるんだ・・・アルバムの写真は平和そのもので、あの人たちが平和のなかにありますようにと願わずにはいられませんでした。