映画「イミテーション・ゲーム」いつの間にか嫌われる主人公に共感しまくりでした。

 働きたい、友達を作りたい。だけど人間がどうして笑ったり怒ったりするのか、よく分からなくて、それでトラブルになった事を思い出しては家で丸まっている方がいいよねーと引きこもりつつ、こんなんじゃダメだと時折立ち上がってみたり。

 

 最近、そんな毎日ですが、今日は何となく見た映画が、そうだそうだよと共感しまくりでした。

 

imitationgame.gaga.ne.jp

 

 主人公の「アラン・チューリング」はイギリスの天才数学者。ただし、人間のことはさっぱり分からないのです。

 

 例えば同僚が
「僕はランチにいくけど?」と言えば「そうなんだ」。
「はらがへってるやつ!」「・・・無言」(腹が減っていない)
「サンドイッチだぞ!」 「・・・無言」(サンドイッチは好きじゃない)
「ランチに行くって誘っているんだ!」「なんで?」

 

 終始、こんな感じで周りを常に苛立たせてしまう。
もちろん映画なので、極端に脚色しているのでしょうが
いつの間にか嫌われてしまうキャラクターに深く共感してしまいました。

 

私もこういう事がよくあるんです。

 

 物語は第二次世界大戦真っ只中のイギリス。
主人公はドイツ軍の猛攻にさられる中、暗号「エニグマ」を解くチームに抜擢されます。

 

 暗号解読マシーンの製作に取り組むものの、こんな調子で同僚にはめちゃくちゃに嫌われ上司からうざがられてしまいます。ジョークがわからないんです。誰もが遠慮する中、本当の事を言って恨まれます。そして変なやつだといじめられる。見ながら、うわぁ、ぎゃー、やめてーって言いたくなりました。

 

 中学校の回想シーンもほんと涙がでますよ!変なやつだってからかわれてボコボコに殴る蹴る閉じ込める。仲間はずれに容赦しないのは世界共通なんでしょうか。「暴力をふるうのは気持ちいいからだ」「衝動が去ればどうでもよくなる」と悟るシーン。ため息がでました。

 

 ただ一人の友人と「人との会話は暗号みたいだ。」「なんで?」「言っている事と実際が違う。でもそれが人には何だかわかるんだろう」と話すシーンがあって、そうだそうだ、その暗号が知りたいと共感していました。

 

 物語中盤「エニグマ」解読のためにユニークな求人広告を出します。クロスワードパズルを8分以内に解けた人に素晴らしいお仕事ありますというものです。空襲の中、防空壕でおばあちゃんが。焼けだされたおじいちゃんが。食糧難で飢え死にしそうになりながら。それでもこの時代の飛行機は美しいんです。邪悪な美しさと必死で蠢く人間の対比。

 

 そして試験日。試験の説明をしている最中に、女性が遅れてが飛び込んできます。女性だからここは違うと追い返されそうになるのですが、主人公は試験を受けるようにと席をすすめます。女性は説明なしで試験を受ける事になりますが、ぶっちぎりのNo1で回答終了。

 

 彼女は「ジョーン・クラーク」クロスワードが好きで、数学の才能が豊かなのですが女性なので仕事が得られず。もちろん「エニグマ」解読チームに来て欲しいのですが、女性だから、世間体が悪いからとなかなか進まず。ようやく女性がいる部署に行くという体裁をつくって働きはじめるのでした。

 

 ジョーンは苦労してきたんだろう、と思うシーンがあります。「女性が働くときは男性に嫌われたらおしまい」「好かれるように仕向ける」と孤立する主人公に話すのです。

 

 ちょうどエニグマ解読マシーンの製作に行き詰まっている時期で「嫌われたら誰も助けてはくれない」とチームメンバーに差し入れをするよう助言をします。物語ではこれがきっかけでチームメンバーと和解。プロジェクトのピンチには皆で協力して立ち向かうことになります。あんなに嫌がらせをしていたメンバーがですよ!

 

 そうしてついにエニグマは解読され、えげつない展開があり、最後の悲劇へと向かうのですが・・・そこはぜひ本編で見ていただきたく!割愛します。


 この映画を見て、一体どうやったら人間と仲良くなれるだろうか・・・と考え込んでしまいました。私はアラン・チューリングのような才能はありませんが、空気が読めずに、いつの間にか嫌われ、いつの間にか優しくされ、人間のことが分からずに困っているのは一緒です。

 

 無意識のなんてことない振る舞いが、この世界のルールにはそぐわないのでしょう。
特に困るのが、仲間ではないと思われた時に、人間は非常に残酷に振る舞うことがある、ということです。

 

 軽い友達であれば、嫌われたら暫く会わなければ済むのですが。
家族や仕事ととなると、長い付き合いになるので本当に大変です。どうして急に怒り出すのか、どうして急にやさしくなるのか。さっぱり分からないのです。せいぜいギャンブルのように確率を計算して最善に振る舞うくらい。

 

 「ジョーン」のように解説してくれる人が身近にいるといいのですが、彼女だっていつでブレずに解説できるわけじゃない。状況によって揺れるのです。そうして傷つけあう。これを何とかできないものか。多少なりともよく出来ないか。

 

 アラン・チューリングらの作ったエニグマ解読機はその後のコンピュータとなり、彼の理論はAIの基礎となりました。彼自身はその後もたくさんの誤解をまぬがれず、41歳で亡くなります。もし生きて元気に活発に活躍していたらこの先どんなものを創造しただろうと思います。