アヘン王国潜入記の感想

Amazonからおすすめされて読んでみたらめちゃくちゃ面白かった!
なんでこの本がツボだってわかったんだろう??? 

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

 

 

著者は冒険好きな青年、高野秀行さん。

誰も行ったことのない極地やジャングルへの冒険記を読んで、こんな冒険がしたい!と思ったのですが時は現代(1995年)そんな場所はもうどこにもなくて。あるとしたら・・・みんなが行くな危ないというような超危険地帯だろうと、選んだのがゴールデントライアングル。アヘン王国なのでした。

 

アヘンはかつて戦争になったほどのやばい物質です。

ヘロインの材料にもなり世界中のマフィアやギャングの資金源になっており、摂取すると幸せな気分になるのですが、中毒性が高く、廃人を量産してしまう。このため世界中で厳しく取り締まられています。

だけど厳しい環境でもよく育ち、何よりお金になるので世界の貧困地帯・紛争地域でひそかに栽培されつづけている・・・。そこに住んでいる人は果たして悪人なのでしょうか。

 

アヘン王国は渡航禁止です。

なので車で数日、歩いて、密入国して、くぐり抜けて、交渉して、人脈を築き、地図を作り、栽培地を探し出していくのです。このプロセスがまさに「冒険」でワクワク、ワクワク。そこらへんのおじいちゃんがゲリラのボス的存在だったりして・・・漫画かよって展開が続々です。

 

アヘンの種まき、お世話、収穫をしたい!

そうしてたどり着いた村は、電気もないし、人々の一生は半径3Kmで完結していて、自給自足。外とのつながりは5日に一回の市だけ。病気になればすぐ死んでしまう・・・。数百年前の暮らしをいまだに続けながら、アヘンを栽培している村なのでした。そこで種まきから収穫までを体験したいと、暮らし始めます。

 

ところが昔の暮らしがめちゃくちゃ大変で。現代人のアドバンテージを生かしてチートかと思いきや、生きるのでいっぱいいっぱい、何度も死にそうな目にあうんです。冒険家クラスでようやく生きてるって・・・昔の暮らしってほんと厳しかったんですね。この本でも次々病気や怪我で命を落としていきます。著者もなんどか落としそうになります。

 

一般人が中世に転生した感じですね!

omocoro.jp

 

時間はゆったり流れて

電気もない、文字もないから、時間はゆったり流れていて。そこでアヘンを吸ってみたら、ものすごーく幸せな気分になって、痛みも苦しみも辛さも忘れる。今この瞬間の幸せを味わうだけ。過去も未来もない。なんの刺激もない平たい板のような心になるそうです。当然なんかやんなきゃという気もゼロなので、どんどん廃人になっていきます。でもやめられない。中毒になってしまいます。一旦は村人たちに止められるのですが、、、、

 

さあ、アヘンの収穫です。

種まきから半年。たんせい込めて育てたアヘンの収穫期。これもまた手作業で一つ一つ心をこめて収穫し、そのお手伝いをします。収穫したアヘンは皆で平等に分ける。とうぜん筆者も分け前をもらって・・・またアヘンをぷかあです。もう十分体験した、これ以上いたら廃人になってしまうと、村を去るのでした。

 

それから、お世話になったゲリラのボスは暗殺され、ルートが使えなくなり2度と渡航することがないまま、現在に至るのだそうです。

 

こんな冒険、ちょっとだけしていました!


ちょうど著者がアヘン村にいた95年の夏、タイーカンボジアバックパッカーしていたのです。
言葉がぜんぜんわからなくて食べてばっかり(笑)バスにバイク、トラックの荷台、ロバにも乗ったよ!田舎道をひたすら走って楽しかった。お風呂はめったに入れませんでした。でもみんな親切でいい人ばかり。この人たちが虐殺していたなんて信じられないよー。

 

今回この本を読んで、平和な田舎の人たちがゲリラだテロリストだと言われるギャップを思い出しました。極悪非道じゃない。鬼畜が住んでるわけじゃない。なのにそう思われてしまう。怖いです。

 

高野秀行さんがすごいのは英語、タイ語、中国語で会話ができて、さらに現地のローカルな言葉をどんどん覚えていく所です。そうすると極悪非道なテロリストがどんな暮らしをしているか、どんな考えをしているかがだんだんわかってきます。

 

それを伝えていくわけです。

 

私もこんなレポートがかけたらな。のんきにさせてくれた、名前ももうわからないあの人たちの事がわかるんだろうか・・・。